こんにちは、心リハ太郎です。
イノベーションとは何か、ということについて面白い記事があったのでご紹介します。
イノベーションの「目的」をAIが探る時代に:日経ビジネスオンライン
この記事で、一橋大学の延岡さんはこう述べています。
「イノベーション」とは、新しい手段で新しい価値を生み出すことですが、本来、価値の方こそが大切であってアイデアや革新性は手段にすぎません。短絡的に言うべきではありませんが、経済的、社会的な価値を作るには技術や概念だけだは不十分です。
つまり、新たな技術を生み出すことや、新しいアイディアを考えつく、ということは、新しい価値を作るための手段であり、それ自体が目的ではない、ということです。
イノベーションというと、技術革新のように感じてしまいますが、本当のイノベーションとは実は価値の創造なのです。
記事内では、日本において、「新しい価値」という目標を立てること自体が、難しくなっており、それは手段と目的を混同しているためだと述べています。
そしてその原因についてこう書かれています。
原因の一つが、イノベーションの手段と目的を混同していることです。技術は手段に過ぎませんが、イノベーションというとAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の活用という手段の話ばかりです。
Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズが、ウォークマンを絶賛したという話は有名で、その延長線上にiPod、そしてiPhoneがあるわけですが、そこには音楽という情報を持ち運べることで人間の生活が豊かになる→あらゆる情報を持ち運び外部ストレージ(インターネット)にアクセスすればより人間は豊かになるのでは、という価値の創造があったわけです。
決してこういう技術があるからこの機械を作ってみようという発想では作れない製品だったわけです。
つまり、こういう技術があるから何かうまく使えないか、ということではなく、こういうことを実現するためには何が必要なのか、ということを考えて実行していくことこそが、イノベーションのタネになるということですね。
この考え方はリハビリテーションにも応用できると思います。
個人的には、リハビリテーションというのは、人間を幸せにするための方法だと考えていますので、リハビリテーション的な技術や新たな介入方法の開発などは大事ではあるものの、その底にはどうしたら目の前の人が少しでも幸せになるのかという考えが流れているべきと思います。
これこそが価値です。
決して新しい技術やアイディアだから世に広まるというわけではないのです。
臨床技術であっても研究であっても、本来は根底に、
誰かの役にたつ、とか
多くの人に寄与する
ことを価値として持つべきで、そういうものこそが後世に残っていくんじゃないかなあと思います。
このことは、先日記事にした、保育分野のIT化の話でも共通しています。
AIを使って看護師やその他の医療職の業務負担を軽減することもできるのでは - 心臓リハビリテーションのまにまに
技術的に優れているということよりも、どうしたら本当に役に立つ仕組みを作れるのか、ということに考えを至らせたことで、既存の技術を組み合わせて人類に共通する悩みを解決しうる方法を提示し、そこに価値があると世界でも認められたのだと思います。
自分の臨床や研究が、単に新しいものを追い求めるだけではなく、その先にある人類普遍に通用しうる価値を見据えているのか、ということを一度考え直してみるのもよいかもしれません。
ただ、紹介した記事でも述べられているように、価値の創造は誰もができることではありません。
そのため、組織においては、統合的な価値を作り出せる人物を大事にし、その人の持つ力を成長させる仕組みを持っておくのは長期的には有効でしょう。
このような人には「困った」人も多い気がするので、短期的には邪険にされてしまいます。
スティーブ・ジョブズもAppleを一度追い出されているのは有名な話です。
ですから一般的な組織でこういう人物を育てていくには、かなりの忍耐と時間が必要になるかもしれず、現実的ではない可能性もあります。
そうするとわ記事内でも触れられていますが、人間ができないとなれば囲碁や将棋で起こったように、AIが新たな価値の創造を担う時代が来るかもしれません。
もう少し人間にも頑張って欲しいところですが、人間の判断には組織の論理や上席者のプライドや予断といったものが紛れ込んでくるので、なかなか尖ったものにはなりにくいのが難点です。
ただし、三人寄れば文殊の知恵、というようによい価値を作り出すことを目的にチームとして動くことができれば、このあたりは突破できるかもしれません。
逆に旧態依然とした組織のあり方だと価値の創造は非常に厳しいミッションになるでしょう。
また日常的なちょっとした改革でも、抵抗というのは必ずあるものです。
会社のユニフォームを変えることで新規・中途採用を活発化しようという取り組みもあるようですが、こんなことでも抵抗は起こりえます。
第6回・ユニフォーム刷新は「採用活動」そのもの - 日経ビジネスオンラインSpecial
この記事には会社のユニフォームを変えるためにはどうしたらいいかについてのヒントが書かれていますが、ユニフォームの選定はセンスのいい人に任せるとか、新しい人を入れるためにユニフォームを変えるのだという価値を理解させるなど、イノベーションの起こし方と共通している部分もありますので、あなたの組織で何かを変える時の参考になるかもしれません。
最後にイノベーションには、技術的イノベーションと破壊的イノベーションがあり、後者が世界を変えていくということについて書かれている超有名な本を紹介しておきます。
もう古典とすら言える本ですが、イノベーションについての優れた論考のみならず、優れた人材だけ集めれば組織が良い結果を出せるわけでないなど組織自体の作り方の重要性についても述べられており、医療界でも応用の効く話が載っています。
Kindle版もありますので興味のある方は是非ご一読ください。
ではでは。