心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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患者さんの運動習慣はどうつける?

あなたは日ごろ運動していますか?

 

いま運動していないとしても、運動する時間をつくる工夫をしようとしたことがありますか?

患者さんに運動しましょうといいながら自分が運動を始めることにチャレンジしたこともない方は、是非自分でも運動を始めてみてください。

 

たとえ運動を継続できなかったとしても、その失敗経験が役に立つ時が必ず来ます。

まずは患者さん目線に立つことができるかどうか

説得力があると患者さんに感じてもらえる話ができるかどうかは、患者さん目線で話ができているかにかかってきます。

 

どれだけ理論やエビデンスで武装して運動の効果を語ろうとしても、まずは聞く耳を持ってもらえなければ話も始まりません(聞いているように見えても言葉がそのまま素通りしています)。

 

人間は自分の身になって自分の目線で考えてくれる人の言うことしか聴きたくないものです。

 

本当はみんな人から言われて何かをするなんて嫌だと本心では思っています。勉強しなさいと親に言われて反発心を持った経験を思い出して下さい。

 

「勉強しなさい!」とガミガミ怒り続ける親より、「勉強嫌だよねえ、じゃあこうしたら少し嫌じゃなくなるんじゃない?こうしたら楽しいと思えるかもしれないよ」って子どもの目線に立ってくれる親の方が、子どもも「じゃあやってみようかな?」って気になるはずです。

 

その人が自分の味方だと思ってようやく「耳を傾けてもいいかな?」くらいの気持ちになります。

 

運動を始めてみたけどうまく続けられなかったという失敗談、どうしたらうまくできたかという成功談、自分なりのやり方を見つける方法などを持っている人は、それだけでも患者さんの視点で話をすることができますから、スタートラインが違います。

 

運動やりたくないなあ、とか、三日坊主ですぐやめちゃうんだよなあ、とか、時間がないよなあ、とか、患者さんが言うことに実感をもってウンウンと頷ける人は第1関門を突破しているわけです。

行動変容のステージモデルを使ってみよう

行動変容のステージモデルは、心リハ領域ではかなりスタンダードな言葉となってきましたがまだ知らない方も多いかもしれません。

 

先ほど患者さん目線に立とう、という話をしましたが、そもそも患者さんの立ち位置がわからないとどの辺りに目線を持ってこればよいのかがわからなくなります。

 

行動変容のステージモデルを使えば患者さんの立ち位置の把握がしやすくなりますので覚えておいて損はないでしょう。

行動変容のステージモデルはこちらの記事で紹介しています。

【参考記事】

行動変容のステージモデル(導入編) - 心臓リハビリテーションのまにまに

第2関門は実感をもって数字を示せるか

患者さんに「30分歩きましょう」というのは簡単ですが、あなたは最近30分歩いたことがありますか? 

 

30分歩くと身体がどんな感じになるのか、暑くなるのか、汗がたくさんでるのか、喉が乾くのか、足がだるくなるのか、息が弾むのか、そもそも30分で自分の家からどの辺りまで行けるのか、そういった実感を持って話をしているでしょうか。

 

また日常生活の中で、30分歩くための時間をつくるためにはどういう工夫がいるのかとか考えたことがあるでしょうか。

 

もしあなたが「30分歩くのはしんどそうだなあ」とか「面倒だなあ」とか「時間がないなあ」とか思うなら、それは間違いなく患者さんも思っていることです。

 

そんな気持ちでする患者指導が果たして上手くいくでしょうか?

 

例えば10分歩くと何歩くらいになるのかとか、自信を持って言えるでしょうか。

また患者さんが毎日5000歩歩いていますと言った時、何分くらい歩いているのかを把握できるでしょうか。

 

こういった経験を自分の中に積み重ねている人の言葉は患者さんの心に響きます。

人が実感を持って語っているかどうかは、何となく相手に伝わってしまうものです。

 

相手から実感のこもった言葉を聞き、またそれが自分の経験と重なると、患者さんは「この人は分かっている」と思ってくれるわけです。

 

まず大事なのはあなた自身の経験を作ること

マニュアルやエビデンスに即した正論ばかり述べても相手の心には響きません。

例えばあなたは運動療法のエビデンスを実感できるような経験をしているでしょうか?

2ヶ月間の有酸素運動を継続すると運動耐容能が上がる実感を持てたことがあるでしょうか?

筋トレの効果を実感した経験があるでしょうか?

 

患者さんの運動習慣をつけるには、まずあなた自身に運動習慣をつけようとする経験が必要です。

 

例えそれが失敗に終わったとしても得るものは必ずあります。

なぜうまくいかないのか、なぜ継続できないのかを考えて、色々な工夫をしてみましょう。

あなたのその貴重な経験はきっと患者さんの運動習慣をつくる助けになることでしょう。

 

ではでは。