心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションについて考えたり思ったりしていることをつらつらと書いています。

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行動変容しにくい人の特徴と対策


こんにちは、心リハ太郎です。
みなさん、行動変容は得意ですか?

これやってみよう、と思ったものの、結局始めなかったり、やり始めたはいいがすぐ辞めてしまったりという経験は誰にでもあるものかと思います。
また患者さんに行動変容を促してみたが、行動に現れなかったということも日常茶飯事ではないでしょうか。

かくいう心リハ太郎もしょっちゅう行動変容(するのもしてもらうのも)に失敗する1人です。

そのくらい、人間の考え方や行動を変えるというのは難しいことです。

しかし、その中でも行動変容を促すのがすごく難しい方がいます。
今回はこのような行動変容の起きにくい人についてお話しします。
ただ、一つ覚えておいていただきたいのが、今回の話を「この人はこういう困った人だから仕方ない」というような諦めの理由付けに使ったり、また「人の言う事を聞かないから病気になるんだ、ざまーみろ」というような自分の言う事を聞かなかった意趣返しに使わないで欲しいな、ということです。

このあたりはオーストリアの心理学者であるアドラーの提唱した理論の一つである「課題の分離」という考え方を知っていただけると理解しやすいかと思います。

では始めましょう。

行動変容しにくい人の特徴

行動変容しにくい人には特徴があります。

それは自分の中の思いや考えと、自分ではコントロールできないもの(自分の中の症状、他人の考えや行動、自分の外で起こる出来事など)をすり合わせることが苦手な人です。
(実は人間は多かれ少なかれそういう性質がありますが・・・)

こうだったらいいのに、とか、こうあるべきだという気持ちが強すぎて、自分の思いに反する状況に、他人の気持ちなどを考慮に入れてうまく対処できない、ということです。

典型的なのは、

  • 俺様気質
  • 悲劇のヒロインタイプ
  • 思い込みの強い人
  • 人からどう思われるかばかり気にする人
  • ネガティブ思考

などです。

これらは他者とのコミュニケーションが自分の中にあるフィルターを通すと歪んでしまい、本来こうやって受け取ってほしいと思うようには情報が伝わらない人です。

あとは

  • 知的能力(理解力)の低い人

も該当します。

難しいことが理解できるだけの素地がない、あるいは教育歴がない場合です。

今の70代から90代くらいまでは、比較的教育歴の短い方も多く、特に80代以降は時代的にも恵まれた環境にある人以外は小学校くらいで学歴が終わっていたりしますので、難しい話は理解ができないというケースも多くなります。

純粋に学習障害などで理解能力が低い場合もあります。

誤解しないで欲しいのは、上記のような人が悪い、と言っているわけではないということです。

人間の性格や知的能力はすぐには変えられない部分ですし、例え性格に難があるから、知的能力が低いからといって人間的に劣っているということにはなりません。

この話は、そういう変えられないところにばかり目を向けるのではなく、変えられる可能性のある他のところに目を向けること、またどうしたら相手が理解できるだろうかと考えを巡らすことが重要だという話なのです。

行動変容しにくい人への対処法

上記のような方々と接する場合は、まず相手のフィールドに降り、相手がどういうフィルターを通して世界を見ているのかを知ることが重要になります。

相手がどういうフィルターを通して世界を見ているのかを理解した上で、それに応じた効果的な話の仕方を考えなければ、何を話しても理解してもらえないからです。

ではタイプごとに対処法を見ていきましょう。

俺様気質や悲劇のヒロイン気質の人には

俺様気質や悲劇のヒロイン気質の人は、基本的に私が世界で一番大事にされるべき人間であると思っています。

俺って凄いだろ、偉いんだぞと言っている人も、私ってこんなに不幸なんです、こんなに大変なんですと言っている人も根本的には変わりません。

もちろん誰しも人間ならそういう側面はあるのですが、ここで述べるのはその傾向がかなり強く、社会性に影響を及ぼしている「ちょっと困ったレベルの人」です。

こういう人にとっては、他人は自分の人生の脇役であり、場合によっては相手が自分と同じ心や感情をもった人間であるということを、本質的な意味で理解していない場合もあります。

この場合、医療者は自分が考えている以上に単なる脇役です。
ドラクエなどのロールプレイングゲーム(RPG)で言うところの町の人レベルで、
「ここはメルキドの町です」
くらいしか言っていないように思われているかもしれません。

俺様気質、悲劇のヒロイン気質の人は、自分にとって都合のいい情報は取り入れたりすることもありますが、そもそも異常なほど他者の重要性が低いため、人の言うことは聞いているようで全く耳に入っていないか、強力な自分フィルターによって歪みまくった形で取り入れられます。

こう言う場合は、自分の物語の進行にとってこの人(医療者)は大事だぞ、なにかヒントをくれるキャラだぞくらいには思ってもらわなくては話が始まらないでしょう。

だからこそ「急がば回れ」で相手の話に耳を傾けることが大事になるのです。
相手が何を重要だと思っているのかを理解できれば、そこを起点として話を進めることができる可能性が増えるためです。

あと、このタイプの方は自分が世界の中心ですから、自分の話に耳を傾けてくれる人には好感を持つ人が多いです。
ですので、これまでの病歴や治療経過(他疾患も含む)などをカルテでしっかりと確認しておいて、理解していますよということを上から目線ではなくうまく伝えることができると、この人は自分を理解してくれていると感じて、コミュニケーションの導入がうまく行くことがあります。

逆に病棟の看護師や医師などがこのタイプの人に対して話もおざなりにしてあしらうような対処をすると、世界一大事にされるはずの自分が軽んじられたと感じ、後々面倒な事態になるリスクが高まりますので気をつけた方がよいかもしれません。

さらにこの傾向の方の中には、世界が自分の思い通りにならないことに悲嘆したり、怒りを感じているケースも結構あります。
(まあ本当は思い通りならないのが当たり前なんですが。)

特に病気になったばかりの急性期では、自分の力ではどうしようもないこと、思い通りにならかったことが起きてしまった後ですから、病気の受容ができないというケースもままあります。

こういう場合は、今その人の病状がどういう状態なのか、これからどうすべきなのかを、正確に分かりやすく、かつ相手のプライドを傷つけないように伝える必要があります。
(面倒に感じやすいところですが、これをするかしないかではその後の治療の受け入れが大きく変わってきますので大事です。)

とにもかくにも傾聴と理解がキーワードです。

思い込みの強い人には

患者さんもですけど、医療者にも結構いますよね、思い込みの強い人。

このタイプは「頭が固く」、1度こうだと思ったら、なかなか修正が効かない頑固者です。

頑固というと、全然首を縦に振らないみたいなイメージがあるかと思いますが、態度は頑固でなく「わかりました!」とか言ってるのに、結果的な行動には全く現れてこない場合も、この思い込みの強い人に当てはまります。

人間は誰であれ基本的には自分が思いたいように世界を解釈するものです。
客観的に世界を眺めているつもりでも、そこには必ず主観が混じっており、見るもの、聞くもの、感じるもの、その全ては自分のフィルターを通して取捨選択されているのです。

思い込みの強い人というのは、このフィルターがかなり強力で、自分なりの結論が先にあり、それに合わせて都合の良い現実解釈を行う傾向が強い人のことを指します。
こういう人は、非常に視野が狭く、見たいものしか見えません。

ですので、その人の結論にとって好都合な情報が入ってしまうと、修正が難しくなるわけです。

健康行動について言えば、タバコを吸いたい、お菓子を食べたい、お酒を飲みたい、動きたくないという結論が先にありますので、それを補完できるのであればどんな理由でもそれにすがりつきます。
(この時に何かの理由がなくても俺基準を理由にできるのが俺様気質です。)

医療者にもいますよね、自分が離床させたくて仕方がないからリスクを無視して無理に離床させたり、逆に離床させると手間が増えるから何か他の理由をつけて離床させない人。

おっと、ちょっと話がそれました。

ちなみに、ここで言う好都合とは病気が良くなることだけではなく、病気が良くならないことも含みます

例えば悲劇のヒロイン気質にとっては、病気がすっかり良くなることは自分のヒロイン性を失うことになりますから、その人にとってはあまり都合がよくないのです。

ですので、いい部分には目を向けず、心臓が悪い理由にばかり目を向けてくることが結構あります。

どれだけ大丈夫だよと伝えても、その気持ちが全く届かないパターンの1つはこれです。

上で述べた俺様気質、悲劇のヒロイン気質には思い込みの強さが同居している人も多いのですが、思い込みの強い人というのは総じて幼児性の高い、客観的視点を持つことが苦手な人です。

こういう方に、客観的な視点を持ってもらうなどの精神的成長を促すことは非常に困難ですし、可能だとしてもとてつもない時間と労力を要します。
ですので医療者にできるのは、行動変容のメリットを感じてもらえる理由を一緒に見つけることかと思います。

この理由には合理性は必要ありません。
その人がそうしたい!と思えればそれでよいのです。
なぜなら相手は思い込みの強い人なのですから。

人からどう思われるかばかり気にする人には

この、人からどう思われるかが行動や意思決定に大きな影響を与えるタイプも結構な確率で存在します。

他人から悪く思われたくないから自分の感情を押し殺し、言いたいことを言わない、伝えるべきことを伝えない、という人です。

そもそも面倒なコミュニケーションを避けるために他人とあまり深く関わろうとしない性質も持っています。

このタイプは、心疾患の発症や予後に影響を与えるとされるタイプD パーソナリティ(タイプD性格)の一因子で、社会的抑制と言われます。

日本は同調圧力が強い社会なので、個人的にはこの社会的抑制タイプはかなりの確率で存在すると考えています。

社会的抑制タイプは、他人と信頼関係を構築するのがすごく苦手です。
基本的には他人の存在が自分の感情や行動を押し殺す原因になるため、他人に対して信頼感をなかなか持てないのです。

基本的には、このタイプの人は他の人からどう思われるかが行動の基準になってしまっているため、逆に思っていることを伝えて欲しい、言ってもらうことで初めてわかることがある、ということを真摯に伝え、思っていることや感じていることを医療者に言っても大丈夫なんだと考えられるよう、信頼関係を築いていく事が重要です。

ネガティブ思考の人には

ネガティブ思考は上で述べたタイプDパーソナリティのもう一つの性格で、物事をなんでも悲観的に捉える傾向のある人を指します。

このタイプは全てをマイナス方向に持っていくため非常に関わりが難しく、これに上で述べた社会的抑制が合わさるとコミュニケーションの困難さも加わって最難関のタイプになります。

昔のアニメにポリアンナ物語というのがあって、主人公の少女ポリアンナはいいこと探しが得意でしたが、ネガティブ思考の人はこの真逆で、悪いこと探しが大の得意です。

ですので、医療者はポリアンナになったつもりでいいこと探しをしてあげるのが大事になります。

キーワードは地獄に仏です。

どんなに悪い状況でも、広い視点を持てば何かいい部分が見つかるのですが、本人は極めて視野が狭くなりやすいので、客観的な視点で眺められる人の存在は重要となります。

ただ、相手の境遇や立場に立った上でいいこと探しをしないと、考えの押し付けになりますので注意が必要です。

知的能力の低い人には

もともとの教育歴が短かったり、認知症や学習障害があって知的能力の低い人に、医師という知的能力だけなら最高レベルの人間が、相手のフィールド(多分一般の医師が考えているよりも遥かに低いところです)まで降りて話をせず、専門用語をちりばめて話をしてしまった場合、わからんということすら医師には伝えずに効果的コミュニケーションはできず終わりになるものと思われます。

知的能力が低い人を相手にする場合、まずは患者さん自身が全く理解できずに治療から脱落しないよう分かりやすく伝える努力をすること、そして家族や周囲の人にも説明を行い、サポート体制を整えることが重要です。

ちなみにMMSE(mini mental statement examination)で27点を下回ってきた場合は、認知機能が低下している場合だけでなく、教育歴の低さなども影響し、疾病管理の重要性を理解できない場合がありますので、周囲のサポートが得られないかについて早期から考えて関わるとよいでしょう。

最後に

この記事では、行動変容しにくい人の特徴とその対処法を述べました。

上記のような方との関わりではもう諦めてしまいたくなることも多いと思いますが、そこでもうひと踏ん張りできると、患者さんの役に立てることがあるかもしれません。
基本的には傾聴と共感のスキルが大変大事になりますが、これは日々磨かないと身につきませんので、患者さんに寄り添うとはどういうことかを考えながら臨床に臨むとよいのではないかと思います。

ではでは。