心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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変化を嫌う人とどうやりとりしていけばいいのか

こんにちは、心リハ太郎です。

組織の中にいると、何か変えたいと思ってもそれを嫌がる人が必ずいるものです。

場合によっては自分がその抵抗勢力になることもあるのではないかと思います。

組織のトップや若手は積極的な変化を望む一方で、中間層などが抵抗してくる、ということは非常によくある話ですよね。


また、患者さんの生活習慣や考え方を変える提案をしたときにも、思った以上に抵抗を受けることも稀ではないでしょう。

日経ビジネスオンラインで、佐藤可士和さんという著名なクリエイティブディレクターの考えを知ることのできる記事が連載されています。


佐藤さんは、今治タオルの再生プロジェクトに関わったり(みんなが知っているあのタオルについたロゴは佐藤さんのお仕事です)、ユニクロのロゴデザインやグローバルブランド戦略を担当されたり、最近ではふじようちえんという幼稚園などのプロジェクトも手がけられています。


その中でこれは難しいけどその通りかもしれないというものがあり、はじめにお話しした問題をどう解決するかのヒントになりそうなのでご紹介したいと思います。


「外からの視点」で本質をつかみ再提示する:日経ビジネスオンライン

変化を嫌う人への有効なアプローチとは

受講者:企業でも行政でも、トップにいる人や若手の社員、職員はクリエーティブなものに好意的だと感じます。しかし、ピラミッドの中間にいる社員、職員は変化を嫌い、結局、プロジェクト自体がうまく進まないということが起きがちです。そういう時に有効なアプローチはあるのか。何かヒントをいただければと思います。 


まさしく、それ!それが知りたい!という的確な質問です。

佐藤さんはどのように答えたのでしょうか。

佐藤:難しいですよね、僕もふだんから、そういうことはよくあります。組織の中では、むしろ変化を嫌がる人の方が多いでしょうね。でも、そういう人たちとも一緒にやらないとプロジェクトは成り立ちません。僕は「戦ったら終わりだ」と思っています。仲良くなって、「一緒にやりましょう」という方向に持っていきます。そういうマインドって、実はすごく大事だと思います。 

 今治タオルの場合も、僕はブランディングプロジェクトを依頼された側なので、みなさんの総意が出来上がっているのかと思っていたら、実は全然そうではなかったんです。今治タオル工業組合に参加するタオルメーカーは100社ほどあったのですが、当初、僕がデザインした「今治タオル」のロゴをタグにして自社のタオルに付けることに参加してくれたのは20社もなかった。多くのメーカーは様子見でした。

 そんな中で、「可士和さん、今治に行って、有力企業の社長たちを説得してほしい」と頼まれて。「え、それ僕がやるんですか」ってちょっとびっくりしたんですけど。でも、僕としては、なんとしてもプロジェクトを成功させたいですから、言われた通り、今治に行って1社ずつ回りました。工場を見て、社長と話をしながらお茶飲んで…(笑)。これを何社もやっていくうちに、少しずつ参加メーカーが増えていったんです。2~3年目には成果も出て、ウェブサイトの売り上げも上がったので、自然と参加企業が増えていきました。

 このケースは僕自身もとても勉強になりました。結局、プロジェクトを成功させるためのミラクルな方法はないんです。戦わない。「一緒にやろう」というベースづくりをすることがプロジェクト成功には重要だと思います。

戦わないことが重要

佐藤さんは「戦わない」ことの重要性を説きます。

自分のキャリアや自論の正しさで戦うのではなく、仲間になることを選択した、ということです。


先日、当ブログでも敵対的な態度や行動を示す人、無関心な人にどう接するべきかについて書きました。


ここでは、人間は曖昧な判断基準で敵味方にカテゴリー分けをする生き物であるので、敵意のないことを示し、相手を仲間に引き込む戦略が有効かもしれないというお話をしました。


佐藤さんのお話を応用して考えると、このようなやり方は、組織の中や、他の組織とのやりとりでも同様ということが言えるのかもしれません。

引用した中に「工場を見て、社長と話しながらお茶を飲んで」という佐藤さんの言葉がありますが、理を尽くして説得するよりも先にすることがある、という意識がにじみ出ている言葉だなと感じました。

目的を明確にすれば争う時間を減らせる

また佐藤さんは争っている時間こそがもったいないとも述べています。

あとは、できるだけトラブルを回避するということでしょうか。押し問答したり、揉めたりしている時間はもったいないですから。僕は「本質がずれなければ、方法論を変えてもいい」と考えます。

さっき「戦わない」と言いましたけれど、押してもダメな時はパッと引くこともあります。「わかりました、じゃあこれはやめましょう」と、提案した案をバサッと捨てて全く違う案にする。表層的なことなら、「いいですよ、それで」と飲み込む。こうしてトラブルになる時間を回避します。こだわるところとこだわらないところをはっきりさせるというのがコツかもしれません。

「本質がずれなければ、方法論を変えてもいい」という言葉は、目的をはっきりさせているからこそ出てくるのだと思います。

多くの人は、自論で相手を屈服させることに時間と労力を費やします。


しかし佐藤さんはそうではなく、

プロジェクトを成功させる、

例えば今治タオルの例なら今治タオルのブランド力を上げる、

という目的を達成することを最重視しているのです。


そのためであれば、どんな方法を使っても構わないだろうという柔軟性がにじみ出た一言であり、これは当ブログでも何度か述べているリハビリテーションの考え方ともマッチしていると思います。

そのために大事なのが、相手と仲間になる、ということだということです。


言葉にすると簡単なようですが、実践するのが非常に困難なこの課題は、我々一人一人が自分の人生における重要な課題のひとつと考えておいても損はないでしょう。

このあたりについては、アドラー心理学は非常に有効なアプローチになりますので、ご興味のある方は、嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えIIなどをご覧になって頂くことをおすすめします。

正解を相手から引き出すアプローチが重要

また、紹介した記事の中でも触れられていましたが、正解は相手の中にある、というのが佐藤さんの考え方の特徴です。

もう一つ記事を紹介しておきます。

佐藤可士和が空回りしていた3年間。ブレイクスルーのきっかけは「ロールモデル」|新R25 - 20代ビジネスパーソンのバイブル

大貫さんや(同案件を一緒に手がけた)鈴木聡さんというコピーライターの方から学んだのが、『イメージは付加するのではなく、相手から引き出すものなんだ』ということです。企業の本質を見つめ直して、本来の姿を引き出す。自分が何をやりたいかではなく、相手のやりたいことを見いだす。つまり、それまで僕が考えていたことと逆だった。

これがいいのだという押し付けでなく、相手の問題意識や意図を汲み取るというコミュニケーションがいかに大事かということです。

方法論がわかっていなかったんですよ。どんなつまづきも、ムダではありません。結論に至るまでの過程です。僕の場合、解法は足し算でなければ、引き算でもなく、『答えは相手の中にある』と理解できたんです

これもリハビリテーションにおいては大事な考え方で、

その人にとっての幸せの答えは相手が持っており、コミュニケーションの中で相手が真に何を望んでいるのかを引き出してくる

と考えておくのがよいと個人的には常々思っています。
(常にできるわけではありませんが・・・)

また、こういうアプローチによって自分の中から引き出されたアイディアに対しては、あまり敵対的な態度を取る人は少ないでしょうから、その人と仲間になるという意味でも、相手を中心としたコミュニケーションは重要であると言えるでしょう。


今回の話は個人的に非常に参考になりましたので、ご紹介しました。


佐藤可士和さんの書籍はこの辺りがおススメです。
クリエイティブな仕事だけでなく、あらゆる仕事の基本的な部分に通ずる内容ですので、是非読んでみて下さい。

ではでは。