心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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独身の罹患リスクとその特徴を考える

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ここ数年、40代から60代前半の独身男性の心筋梗塞及び高血圧性心不全の発症者が増えてきたように思います。

独身はそれだけでリスクである

下記の記事では年齢層に関わらず独身でいることは生活習慣病やそれに関連する重篤な疾患の罹患、死亡のリスクが高いことが紹介されています。

不幸の連鎖、男性の3人に1人「生涯未婚」時代:日経ビジネスオンライン

引用して紹介します。

生涯未婚となってしまう独身男女の人生の一番の特徴は、ただただ早死にが避けられないことだ。未婚者と既婚者を比較した死亡率の差異で見ると、本来死亡率が低いはずの45歳から64歳の未婚男性は同じ年齢層の既婚男性より2.0倍から2.4倍程度高くなる[1]。同じく、伴侶に先立たれた男性も、生活リズムの変化や食事内容の劣化、家庭内での話し合える人の喪失など、女性に比べて高い「ひとりぼっちリスク」を抱えることになる[2]。とりわけ、有意に死亡率が高くなるのは糖尿病や心疾患、肝疾患といった、生活習慣に起因する割合の高い疾病が重症化することだ。それも、独身であるというだけで、25歳以降のすべての年齢層で死亡率が高くなる傾向は特筆してしかるべきだろう。男性ばかりを強調するようだが、女性も男性ほど死亡率が高いというわけではないというだけで、リスク自体は既婚女性よりも高くなっている。

<参考リンク>
[1] 厚生労働省人口動態統計(2016年度)

[2] 国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成24年1月推計)

 独身でいることは日本だけでなく他国でも死亡リスクを高めるとされ、それは喫煙や不健康な食事よりも悪影響があるそうです。

結局のところ、人生においてもっともリスクの少ない暮らし方をしようとすると、結婚し、子供をはぐくみ、人生の最後まで伴侶と手をつないで生きていくことに他ならない。他国の事例を見ても喫煙や高カロリー食よりも独身のほうが人生を短くする要因と認知されており、独身の短命は我が国だけの現象ではない。

病気になることは多数のリスクを招く

もしかすると中高年の独身者には早死にしてもいいっていう人がいるかもしれません。

しかし、早死にするということは基本的にその前に病気になるということです。

病気になっても即死する人ばかりでないことを考えると入院治療に関わる金銭的リスク、病気による肉体的苦しみや精神的不安のリスクを抱え、その後の人生を生きることになります。

もし病気を機に失職すればさらに金銭面でのリスクは跳ね上がるため、本当は若くして病気になどならずにすむ生活ができればそれに越した事はないのです。

独身者は経済的リスクを抱えた人が多い

しかし、我々の目の前に現れる患者さんは、中高年になっても独身であるという社会的背景を持ちながら発症に至った人たちです。

未婚の理由の大きなウエイトを占めるのが経済的理由であるとも言われています。

このことは退院後の病気の管理や治療の継続にも大きく影響する因子です。

お金がなければ治療を継続できないし、そんなことどうでもいいという精神状態に陥りやすいからです。

 結婚できない男女で一番の障害になるのは経済問題だ。所得が少なく仕事が不安定であるために結婚に踏み切れない20代男女は、調査によって数字は異なるが、結婚できない理由上位を「結婚資金がないから」と回答している。20代、30代の正規、非正規を問わず支払われる賃金自体は下げ止まっているが、上昇し続ける社会保障費負担もあって手取りは伸びず、賃金が今後上がる保証もないとなれば、結婚よりもまず自身の生活をきちんと安定させるという志向になるのは致し方のないところともいえる。

独身者は対人能力の低い人が多い

このような社会・経済的背景に加え、対人関係の能力や経験も重要です。

若年発症の独身患者さんには対人コミュニーケーションの苦手な人も相当数いると思われ、このことが治療をより難しくしている可能性もあります。

統計的に見ると、30代未婚男性でそれまで女性と交際経験がない人は、年代によっても異なるが概ね20人に1人以下しか結婚することができない。

対人コミュニーケーションの苦手さは医療者との関係にも現れます。

入院中および退院後の治療や病気の管理のために必要な自分の情報、思っていることや不安、自分にはできそうにないことなどを医師や看護師や薬剤師や理学療法士などの医療者にうまく伝えられず、相互の信頼関係構築が非常に出来にくくなるのです。

その結果、自分の病気についてしっかりと理解ができず、また医療者に怒りだしたり、うつになったりして治療から脱落し、再発していくものと思われます。

 

これから増える独身者に対してどう対応するかを考えておこう

皆さんの前に現れた未婚もしくは離婚後の独身男性の患者さんは、このような人たちなのかもしれません。

そしてこのような人の数は今後さらに増えていく可能性があります。

困った人だなあ、ダメな人だなあ、と諦めたり見捨てたりするのではなく、このような特徴を持った人たちと、どうしたらよりよい情報、よりよい医療を提供できるような関係性を築けるかについてしっかりと考えてみてもよい時期なのではないでしょうか。

個人的にはアドラー心理学を応用するのは効果的なのではないかと考えています。

ではでは。