心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリで3000人以上の患者さんと関わったわたしが日々考えたり感じたことを綴っています。

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リハビリテーションをサッカーチームに例えてみる

こんにちは、心リハ太郎です。

突然ですが、このイラストをご覧ください。

サッカーのフォーメーションになぞらえ、リハビリテーションが何を目的とするかを考えるための図です。

こりゃなんじゃらほい、とお思いになる方も多いかと思います。

しかし、この図はリハビリテーションに関わる人々の共通理解を深めるための、非常に有用なツールになると考えています。

リハビリテーションとは何を目指すべきか?

何故、セラピスト間での統一された目標が設定できないのか?

急性期と回復期、生活期(慢性期)での目標は本当に違うのか?


このようなことを長年考え続けた結果、出てきたわたしなりの一つの結論がこのイラストに凝縮されています。

サッカーチームの目標は得点を取ること

サッカーチームの目標は失点を防ぎ、得点を取ることです。

イラストの下の方に守備陣が、上の方に攻撃陣が配置されています。

守備陣の目的は失点を防ぎ、ボールを奪って攻撃陣に繋ぐことです。

攻撃陣の目標はボールを繋いで、得点を取ることです。

サッカーチームは、究極的には得点を取ることが組織の目的であり、そのために各ポジションに役割が割り当てられています。

サッカーには様々な戦術やフォーメーションがありますが、目的を一つに絞るとすれば、それは『得点を取ること』に集約されます。

どれだけ失点を防いだとしても、得点を取れなければ勝つことはできないからです。

そして『得点を取る』という意思統一が深いレベルでできているチームほど強いものです。

それは失点を防ぐための守備は、ボールを奪い攻撃に移るために行われるものだからです。

「失点しなかったー、よかったー。」
で終わってしまうチームは、得点を奪うことができません。

守ってそれで終わり、というのではダメなのです。

攻撃に移り、得点(ゴール)を獲るという目標が攻撃陣だけでなく守備陣にも必要なのです。

もちろん攻撃陣も守備の意識が大事なのは言うまでもありません。

なぜなら失点を防がねば得点をしても意味がなくなりますし、そもそも守備をしてボールを奪わなければ攻撃をして得点に結びつけることも叶わないからです。

リハビリテーションの最終的な目的とは命を救うことではない

では、リハビリテーションはどうでしょうか?

リハビリテーションに関わる皆が本当に一つの目標を目指せているのでしょうか?

自分のやりたいことだけ、目指すことだけしか見えていないこともあるのではないでしょうか?

そもそもリハビリテーションの究極的なゴール(目標)とは何なのでしょう?

リハビリテーションとは何を目指すべきものなのでしょうか?


医療の究極的な目標の一つは「生命を救う」ことです。

しかしリハビリテーションの目標は「人生を取り戻す」ことにあります。

これを元に、あらゆるリハビリテーションの軸を一つにできないかとさえ考えています。

リハビリテーションの究極的ゴールはQOLの向上


2018年度末から、かつてわたしの勤めていた施設のリハビリ部門の有志で新人教育をどのように行うか、という議論を行なっていました。

そこでは、理学療法士の疾患別チーム制が取られており、チーム間ではあまり横の繋がりがありません。

また、ICUでの人工呼吸器管理や離床に携わる専門チームもあり、ICU退室時にはこのチームから各疾患別チームへの縦の繋がりはあるものの、簡単な申し送り程度のみしか行われていない状態です。

超急性期から回復期に近い亜急性期まで(場合によっては回復期の時期も)の患者さんが対象になっていますが、それぞれのチームの中で完結してしまうこと、

ICUで人工呼吸器管理された方に対する超急性期のリハビリテーションに関わる者もいれば、わたしのように心臓リハビリ専属のものもいますし、脳卒中や整形疾患、亜急性期や回復期に近い部分でリハビリテーションに関わる者もいます。

すると、セラピストとして行なっている評価や行為が必然的に異なるため、互いへの不満が出やすくなってくるという問題が起こります。

何故そうなるのか。


これは、おそらく

リハビリテーションとは何を目標に行うものか

という共通の目的が設定されていないためだろうと思われます。

リハビリテーションとは、理学療法のことでも作業療法のことでも、言語療法や摂食療法のことでも、もちろん離床や運動ということでもありません。

一言でいえば、疾患や障害によって低下した患者さんの人生の質(QOL: quality of life)を高めること、といえるでしょう。

これは、

  • 超急性期
  • 急性期
  • 回復期
  • 生活期(維持期)

であっても根本は変わらないはずです。


組織は全体で統一された目標がなければ有効に機能しないはずです。

個人1人の力では達成できないことをするために、人間は組織を作り協力するのです。

なので仕事をする限りにおいては、自分の属する組織が何のために存在しているのかを考えることがベースになります。

もちろん個々のチームや個人の目標はあるとは思います。

しかし、やはり1人2人だけで行うことよりも組織として行うことのほうが大きな事を成し遂げられるはずです。

世の中にある会社は、本来利益を上げることが目標ではなく、社会の中で組織として何かを達成することが目標です。

ということは、同様に医療機関もその中にあるリハビリテーション部門も利益を上げることが本来の目標ではなく、組織として社会に何らかの貢献することが目標となり、その結果利益も得られると考えた方が良いでしょう。

できるだけ多くの人が納得できる目標設定のモデルを提示すること


その中で最も重要なのが、リハビリテーションは「患者さんが自分の人生を再び取り戻し、QOLが高い状態を目指す」ということだと思うのです。

あなたの組織ではどうですか?

ではでは。