こんにちは、心リハ太郎です。
黄疸=肝臓のサイン?
いいえ、心不全かもしれません。

外来の心臓リハビリテーション中、ふと患者さんの眼を見て「…あれ?少し黄色いかも」と感じたことはありませんか?
そんなとき、肝炎や胆石といった肝胆道系の疾患を思い浮かべるのが一般的ですが、実は心不全でも黄疸が出ることがあるということをご存知でしょうか。
特に**右心不全による“うっ血性黄疸”**は、見落とされやすいけれど重要な臨床サインです。
本記事では、心不全による黄疸の見方と、すぐ使えるフィジカルチェックのポイントをご紹介します。
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なぜ心不全で黄疸が出るのか?
心不全の中でも右心不全が進行すると、体の静脈系にうっ血が起こり、肝臓にも血液が滞るようになります。
この状態は「うっ血性肝障害(congestive hepatopathy)」と呼ばれ、肝細胞が低酸素状態にさらされることで直接型ビリルビンの排泄障害が起こり、黄疸が生じるのです。
慢性的にうっ血が続くと、肝臓は「ニクズク肝(nutmeg liver)」と呼ばれる網目状の変化を示し、まるで香辛料のニクズク(ナツメグ)のような外観になります。
これがさらに進むと、肝硬変に近い状態へと変化することもあります。
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フィジカルで見抜く!チェックすべき5つのポイント
以下の5つは、心不全による黄疸を疑う際にとても役立つ観察ポイントです。
1. 黄疸(皮膚・眼球結膜の黄染)
外来での会話中や運動中、患者の顔や眼を見て「黄色っぽいな」と感じたら要注意。
直接型ビリルビンの上昇を示すサインかもしれません。
2. 頸静脈怒張(JVD)
座位で首筋の静脈が膨れていないか確認します。
うっ血性心不全の代表的な兆候です。
3. 両側性の下腿浮腫
むくみが両足に均等に見られ、指で押すとへこむ(pitting edema)場合は、静脈圧の上昇が疑われます。
4. 肝腫大+圧痛
右季肋部に腫大した肝臓が触れるか?圧痛があるか?
うっ血性肝障害では、**“押して痛い肝臓”**がポイントです。
5. 呼吸苦・起坐呼吸
運動時の息切れや、夜間・仰臥位での呼吸困難を訴える場合、左心不全の合併や全身うっ血の進行も視野に入れましょう。
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実際に黄疸を見つけたら?
「黄疸」だけで肝疾患と決めつけず、全身を診る視点を持つことが重要です。
以下のような状況では、医師に早めに報告を。
• 黄疸+頸静脈怒張+下腿浮腫のセット
• 圧痛を伴う肝腫大が明らかに触知できる
• 息切れの悪化や夜間発作性呼吸困難の訴え
• 徐々に黄疸が進行している印象がある
このような場合、肝障害だけでなく心不全の増悪や心肝連関の可能性が疑われます。
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おわりに
外来心リハでは、「運動耐容能」や「息切れ」に意識が向きやすい一方、
「肌の色」「目の色」などの小さな変化は見逃されがちです。
しかし、心不全性黄疸は“肝臓からのSOS”であると同時に、“心臓からのサイン”でもあるのです。
あなたの「何かおかしいな?」という観察眼が、早期の対応につながります。
ぜひ日々のリハビリ評価の中で、この視点を加えてみて下さい。
ではでは。