こんにちは、心リハ太郎です。
人の育て方に関するいい記事があったのでご紹介します。
部下に好かれる上司が必ずしもいい上司ではない
人の上に立つ仕事では、部下に好かれよう、よく思われようとすることでその部下の将来を潰す可能性があることをしっかり考えなくてはいけません。
良い上司になろうとするほど部下がますますダメになる理由 | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン
例えば、いつも「頑張っている姿」を褒めてくれる上司がいるとする。その部下は「結果が悪くても頑張っている姿を褒めてくれる、部下のモチベーションを上げてくれる『良い』上司だ」と思うだろう。
そして、「上司がモチベーションを上げてくれるから頑張ろう」と思う。裏を返せば、「上司がモチベーションを上げてくれなければ頑張れない」人間になってしまい、自分は「モチベーションを上げてもらわなければ頑張らなくて良い存在」だという勘違いをするようになってしまう。また「頑張る姿」が褒められるわけだから、自分が求められていることは「良い結果」ではなく「頑張る姿」だと勘違いしてしまう。その結果、「頑張る姿」をアピールするようになってしまう。
要するに「良い」上司の言動によって、「上司がモチベーションを上げてあげなければ頑張れない、頑張る姿のアピールがうまい、結果にこだわらない部下」が完成してしまうのだ。
スキナーによる強化学習の理論では、ある行動によってポジティブな結果が起きるとその行動が強化されると言われます。
この場合は、頑張る姿を上司に褒められたことで、部下の頑張るアピールが上手くなるということですね。
このように褒めて伸ばすやり方は歪んだ形で現れてくることがあります。
自分を見つめ直してみよう
人の上に立って働く人は自分が嫌われないために優しくしているつもりで部下たちの将来を潰していないのか、部下として働いている人達は頑張る姿を見せることで結果を問わず誉められようとしていないのか、今一度自分を見つめ直してみるとよいかもしれません。
こういうことにいつまでも気付かないことこそがその人の人生における不幸であり、組織全体に影響を及ぼす災厄だと思います。
部下からどう思われるか、上司からどう思われるかなどといった、他人がどう思うかということは他人の意思次第であり、自分の行動ではどうにもならない部分です。
よって他人からよく思われようと何かの行動をすること自体が不毛です。
ですので相手の気持ちは相手に任せる、自分の気持ちは自分の自由であると考えることがポイントになります。
これを「課題の分離」と言い、アドラー心理学で使われる考え方です。
アドラー心理学を応用してみよう
『嫌われる勇気』によって日本でも有名になったアドラーは「すべての悩みは人間関係の悩みである」と述べています。
アドラーの所にカウンセリングを受けに来る人の大半は次のどちらかの話しかしなかったと言います。
- 「かわいそうな自分」
- 「悪いあの人」
悩みがあるという人の話は「私は大変なんだ」という話か、「どうにもならないあいつが悪いんだ」という話か、大体この2種類に大別されるということです。
しかし、この類の話をいつまでしていても悩みは解決しません。
なぜなら問題が自分の外にあるからです。
問題が自分のコントロール下にあると感じられないと人間は精神心理的な悩みを抱え始めます。
こういう思考に囚われた時に考えるべきは一つです。
「これからどうするか」
この言葉が、問題を自分のコントロール下に移すための鍵になります。
我々は自分ができることに目を向けるべきで、自分の力では変えられない過去の出来事や他人の事などを問題視しても仕方がないのです。
部下からどう思われるか、上司に気に入られるか、などという自己決定権のない問題を考えても仕方がないのです。
大切なのはあなたがどう思うかであり、もしあなたが上司ならば、部下をどう思うかはあなたが決めてよいことなのです。
逆に言えば部下があなたをどう思うかは部下が決めてよいことであり、どう思われようと目くじらをたてるようなことではないとも言えます。
これが「課題の分離」ということです。
課題の分離とは他人を切り捨てることではない
課題の分離が誤解されやすいのは、恐らく「他人は他人、自分は自分」という考え方と紛らわしいからでしょう。
アドラーは、人間は物理的に弱い生き物であり、他人と協力しなければ生き延びることができない社会的な生物であるといいます。
そのため、集団や社会に貢献していると感じられた時に人間は喜びを感じるのだとも言っています。
このことから、他人と協力することが人間という生物の基本であると言えます。
そして他人と協力することで決して1人では成し得ないような大きな仕事を達成することができるのです。
病院などの組織は本質的には患者さんの治療という、1人では成し遂げられない目的を皆が協力して達成するために存在しています。
協力とは他者を尊重し、お互いを尊敬し合うことでしか成し得ないことです。
課題の分離とは、自分のことは自分の自由、他者のことは他者の自由と考えることで、自分と他人とを共に尊重し、各人に自己決定権(自己責任)を与えるための考え方です。
つまり課題の分離により、皆を他者から精神的に自立した大人とみなすことで、自発的な協力体制を構築するための基礎が築かれるわけです。
ですので、「他人は他人、自分は自分」という人を突き放すような考え方と「課題の分離」とは真逆の考え方であることがわかります。
組織のパフォーマンスを最大化するためには
チームとしての最大のパフォーマンスを発揮するには何が必要なのかについてのGoogleの調査では、以下の5つが重要であるという結果が出ています。
Googleがたどりついた「効率の高いチームを作る5つの要素」とは - GIGAZINEより
- 心理的安全性:チームで働く上において、自分が正しく受け入れられているかという心理的な安全感があるか。メンバーから攻撃されたり、非難されることがないチームでは、質問をしたり、新しいアイデアを披露することにためらいが生じない。
- 信頼性:チームメンバーの仕事の能力についての信頼性。「質の高い仕事を定められた時間内に終わらせられるか」といった項目について相手を確実に信頼することができるか。
- 組織構造と透明性:与えられている仕事について求められている内容が理解できているか、それらを満たすためにどのように仕事しているか、そして個人の仕事がチーム全体のパフォーマンスにどのような影響を与えるか、についての理解。仕事のゴールは個人及びチームの能力に応じて与えられ、その内容は明確で、チャレンジしがいのあるもので、かつ成し遂げられるレベルでならなければならない。
- 意味:個人が行っている仕事と、その結果が持つ意味を理解できているかどうかがチームの効率性において重要。
- 仕事が与える影響:個人及びチームの仕事の結果が、どのような影響を与えるかを理解することが重要。チームにおいて自分の働きが他のメンバーにどのような影響を与えているのかについて理解することで、チーム内における存在を確認することができる。
また、この記事によればチームの効率性に対しては以下の項目は少なくともGoogle内において全く意味を持たなかったそうです。
・チームメンバーの地理的要因(1つのオフィスで一緒に働く必要性なし)
・コンセンサスに基づいた意志決定
・チームメンバーの外向性
・チームメンバーにおける個人の能力
・仕事の大きさ
・年功序列
・チームの大きさ(人数)
・在任期間
つまり、自分がそのチームで安心して働くことができ、お互いに信頼感を持ち、自分がチーム内で果たすべき役割を意識・理解できていることこそが重要であり、アドラーのいう課題の分離と協働を達成できていることがチームを最適化するのです。
そこには無駄な上下関係や、個人の能力を競い合うことや、皆での取り決めやルールなどは必要ないのかもしれないということですね。
ですので、他人を育てる時に基本とすることは
- 他人からどう思われるか、どう評価されるかは自分ではどうにもならないため、そこは相手にまかせる(課題の分離)
- 信用(こういう条件があるから相手を信じる)で組織を作るのではなく、信頼(構成メンバーを本質的に信じる)で組織を作る
- 貢献感を得ることが人間の幸せの一つであるため、自分が他者に貢献できていると感じられるような組織のあり方を模索する
ということになると思います。
『幸せになる勇気』を読むとこの辺りのことが非常によくわかります。是非読んでみて下さい。
ではでは。