心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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リーダーのもつ2種類の力

こんにちは、心リハ太郎です。

組織においてリーダーの役割は重要です。

なぜなら能力や資質の有無に関わらず、組織内での支配力を与えられるため、その地位につくだけでも組織に多大な影響を及ぼすからです。

人や組織に影響を及ぼす2種類の力

河合薫さんによれば人や組織に影響を及ぼす力には2種類あるとのことです。

逆上大臣、泣く大臣、守る首相と問題企業の同根:日経ビジネスオンライン

 そもそも「力」には二種類の意味がある。

 一つは、何かをする「力の所有」で、これはその個人に内在する潜在能力である。そして、もう一つが、他者に対する「力の所有」で、これは地位が持つ支配する力だ。

 適材適所ということから考えれば、前者の「力を所有」している人がリーダーになるべき。が、実際にはその地位に求められる潜在能力なき人が、地位が持つ支配する力だけを手に入れている場合が多いように思う。

その地位に求められる潜在能力のない人(普通の人)が、地位のもつ支配する力だけを得た時、極悪なことを平気でするようになるというスタンフォード監獄実験の結果が紹介されています。

スタンフォード監獄実験

このスタンフォード監獄実験は監獄を模した環境を作った実験です。この実験からは恐ろしい結果が判明しました。

 新聞広告によって集められた心身ともに健康な被験者24人を、無作為に囚人役と看守役に割り振った。被験者には「刑務所とほぼ同じ環境の中で、2週間を過ごしてもらう」ことだけを告げ、囚人役にはそれぞれID番号が与えられ、互いに番号で呼び合うことが義務づけられた。囚人は粗末な囚人服を着せられ、一部の囚人役は手足を鎖でつながれた。

 一方、看守役には制服と木製の警棒と、ミラー型のサングラスが手渡された。実験初日。何事もおきなかった。が、2日目に変化が起こる。

 囚人役の被験者たちが、乱暴な言動で、看守たちを困らせた。看守役の被験者たちは“囚人”たちを鎮めるために虐待行為を始め、その虐待は次第にエスカレートしていったのだ。3、4日と経過すると看守たちは囚人をまる裸にしたり、トイレ掃除を素手でやらせたり、そこで性的な虐待をし、精神的にも肉体的にも囚人たちを追い込んだ。

 そして、実験開始から1週間足らずで、危険を感じた博士らは実験を中止。「これ以上続けたら、取り返しのつかないことになる」という理由だった。

この実験で分かったことは人間は環境によって悪人になりうるのだということです。

管理・支配する側になると、普通の人間だったはずの人が、数日で全く豹変して非道な行いや態度を示し始めるのです。

 

これは医療者と患者さんの関係に置き換えて考える事もできます。

医療者は人間として患者さんよりも優れているという訳ではないのですが、患者さんは治療を受ける側ですから言うことを聞くしかない場合も多々あります。

スタンフォード監獄実験の結果を考えれば、先生と呼ばれる職業は特にこの「人間的に優れている訳ではないのに立場的に優位に立つため、自分が偉いと勘違いし始め、態度が変わり始める」ケースもありそうです。

我々もこういう先の事例から学ぶべき事は多いと言えます。

支配する力と潜在的な力

このように支配する力(立場的な優位性)は人間を変えてしまう危険性がありますが、はじめに紹介したもう1つの力である内在的な潜在能力はどう違うのでしょうか?

河合さんの記事から引用してみましょう。

 「支配する力」ほど、人を狂わす恐ろしい“武器”はない。そもそも潜在能力を持つ人は、他者を支配する力など持たなくても、他者に影響力を及ぼすことができる。

 これを実証したのが、米コロンビア大学で行われた実験である。

 この実験では、互いに面識のない人たちを集め、ある課題の解決策を議論してもらった。被験者たちは最初に、各々が個人的に「解決策」をいくつか練り、その後、グループディスカッションを行い、グループとしての「回答」を決めてもらった。

 話し合い終了後、参加者たちに「メンバー1人ずつの評価」を依頼。評価は2つの軸に分けた。一つ目が「支配する力」に関するもので、その人が「強引だったか?」「恐ろしかったか?」「高圧的だったか?」など。二つ目は「潜在能力」に関するもので、その人の「能力は高いと思うか?」「傾聴に値する人物だったか?」「尊敬できるか?」などを、それぞれ評価してもらったのだ。

 その結果、「支配する力」の高い人ほど影響力が高く、メンバーたちが彼の意見に従っていたことが分かった。そして、それと同等の影響力が「潜在能力」の高い人にもあることがわかった。メンバーたちは、「潜在能力」が高い人に魅かれ、好意を抱いていた。一方、「支配する力」の高い人の意見には同調はするけど、その「人」のことを嫌っていることもわかったのである。

このように、人に言うことを聞かせる圧力をうまく使える人は集団を支配しやすいが、実は嫌われるため集団のメンバーは心底ついていきたいとは思わないわけですね。

自分の立場を利用した関わり方は組織をダメにする

あなたは、潜在能力がないために自分の優位性を示すために立場を利用してはいないでしょうか。あるいは、潜在能力のない人を集団のリーダーとして選び、組織にダメージを与えていないでしょうか。思い当たる節がある時は、一度自分や組織を見つめ直してみて下さい。

また将来リーダーになる予定のある人や、リーダーになりたいと思っている人は、どうしたら自分の潜在能力を高めて集団に貢献することができるか、また地位に甘んじないためには今から何をしておかなければならないかについて考えておくのが良いでしょう。

 

また、今回紹介した記事は医療者と患者さんとの関係性についても示唆に富んだ内容だったと思います。

みなさんも自分が立場によって高圧的になっていないかを日々振り返りながら過ごしてみてはいかがでしょうか?

 

ではでは。