心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリで3000人以上の患者さんと関わったわたしが日々考えたり感じたことを綴っています。

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CPX中に起こる「迷走神経反射」との付き合い方

こんにちは、心リハ太郎です。

今日はちょっと臨場感のある話です。

心肺運動負荷試験(CPX)を日常的に実施していると、いつか必ず出会うのが「血管性迷走神経反射(Vasovagal reflex)」です。

頑張って追い込んだ運動の直後、患者さんの顔が青ざめ、うつろな目つきで座っている—その光景は、経験が浅いうちは非常に恐ろしく感じるものです。

あの瞬間、どう動く?

ある日、CPXの終了直後に、患者さんの表情が急に変わりました。

顔面蒼白、意識朦朧。こういうとき、慌てるのは当然ですが、冷静な観察と行動が何より重要です。
• 話ができるか確認
• 12誘導心電図(ECG)と血圧計は装着したまま
• 仰臥位へ誘導(ベッドへ寝かせる)
• 意識レベル・末梢冷感・脈拍の触知を確認

意識が戻ってくるようなら、そのまま端座位で様子を見ます。

顔色が戻らないときは?

もしも、
• 意識がはっきりしない
• 顔色が悪い
• 血圧低下が明らか

であれば、下肢を挙上しましょう。

私は自分の膝に患者さんの足を乗せる方法をよく使います。これにより、下半身から心臓への血流を促します。

この状態で再度バイタル確認を行い、
• 顔色や意識の改善
• 血圧の上昇

が見られたら、下肢をおろして再確認。それでも大丈夫なら、端座位に移行して経過を見ます。

冷静さは、備えから生まれる

内心はドキドキしますが、患者さんの前では**「大丈夫ですよ」と落ち着いて」**声をかけるのが大事です。

医師が近くにいない場合は、まず「人を呼ぶこと」から始めてください。

経験する前に、知っておこう

迷走神経反射は、はじめての対応だとパニックになるかもしれません。

だからこそ、
• バイタルサインとフィジカルアセスメントの確認項目
• 下肢挙上の方法
• 逐次の判断基準

をあらかじめ“身体で覚えておく”ことが大切です。

そして、患者さんとご家族には後ほどしっかり説明を。

「ご安心ください、想定された範囲の反応です」と。

最後に一言

運動負荷試験は、患者さんの体力だけでなく、スタッフの判断力と胆力も試される場です。

今日も、少し嫌な汗をかきました。でも、無事で何より。

あなたにも、もしもの場面で役立てば幸いです。

ではでは。

補足
• 本記事の内容はあくまで一つの事例に基づくものであり、すべての症例に当てはまるわけではありません。
• 判断に迷う場合は、必ず医師の指示を仰いでください。