心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションについて考えたり思ったりしていることをつらつらと書いています。

研究発表について(その3)

 前回からの続き

研究発表について(その2) - 心臓リハビリテーションのまにまに

前回は自分の研究の目的と意義をはっきりさせましょうという話でした。

研究の目的とは

研究における目的は、文字通り、抄録(abstract)、ポスター・スライドや論文の【目的】(object)に書きます。

【目的】はテストの問題文と同じ役割で、Q&AのQにあたる部分です。

【結果】がQ&AのAにあたる部分になります。

つまり、研究とは自分で作った問題文(Question)に自分で解答(Answer)することに他ならないのです。

では試しに問題文を作ってみましょう。こんなのはどうでしょうか?

Q:「心筋梗塞患者のコレステロールの値が退院後に改善しているか?」

これに対する解答は「改善している」か「改善していない」のどちらかになるのでこれでよさそうにも思えますが、これで問題文が作れたと言えるのか。

答えはNOです。

なぜならこの問題文は一見解答できそうに見えますが、曖昧すぎて答えが定まらないのです。

例えばコレステロールといっても、中性脂肪(TG)のことなのか悪玉コレステロール(LDLコレステロール)のことなのか善玉コレステロールHDLコレステロール)のことなのか、それとももっと新しいコレステロール指標のことなのかすら分からないですよね。

また「コレステロールの数値が改善した」というのはどういう基準で判断するのかも分かりません。

基準とは例えば、正常値の人の割合が改善したのか、それとも数値自体が変化したのかなどです。

コレステロール値が高くなかった心筋梗塞患者さんを含めるかどうかも結果に影響しそうです。

あとは退院後といっても、3ヶ月後か1年後かなど調査をする時期も決めておかないとはっきりとした答えが出せませんね。

こう考えると、問題文はこんな感じになります。

「入院時に中性脂肪の数値が高かった心筋梗塞患者さんの退院3ヶ月後の中性脂肪の数値が低下しているか?」

これで随分はっきりと答えが出せる形になりました。

このように研究の目的はできる限り具体的な表現まで落とし込みましょう。

研究の意義をはっきりさせる背景作り

さて、ここまで来ると疑問が出てきます。

なぜコレステロールの中で中性脂肪を選んだのか?

なぜ退院3ヶ月後に変化が出ていると考えたのか?

これまで退院後に中性脂肪が下がっているというデータを報告している論文はあるのか?

などです。

これは、研究意義(旅行でいえば「なぜわざわざその場所に行く意義があるのか?」)に関わる大事な疑問です。

これまでに報告されていることを手間をかけて調べても時間の無駄ですし、逆に報告されていないことであっても臨床的に意味のない問題の場合は研究の手間をかける必要はありません。

この疑問に答えるのが、研究背景(Background)の部分です。

研究背景は概ね次のような内容になります。

  • この分野でこれまで判明していること
  • この分野でまだ分かっていないこと
  • なぜそれを調べることが重要なのか

この研究背景から研究の目的(リサーチクエスチョン)が導き出されるため、研究開始前の事前調査は大変重要です。

研究背景がしっかりした研究は非常に説得力のあるものになるのです。

 

次回に続く

研究発表について(方法編その1) - 心臓リハビリテーションのまにまに

 

バイオサイエンスの統計学―正しく活用するための実践理論

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