心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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あなたの前にいる患者さんには本当に「読解力」があるのか?

こんにちは、心リハ太郎です。

AIは東大に入れるかプロジェクト、というものがあるそうです。

その研究者の方が、AIに読解力をつけさせるのは非常に難しい、とおっしゃっています。

AIに国語の問題を解かせると、偏差値が49.6となり、学生の平均を下回るそうです。

一方で、読解力がないはずのAIよりも点数が低い高校生もおり、研究者は「文章の意味を理解できない東ロボ(AI)よりも、得点の低い高校生がいるのは、どういうことだ?」という疑問を持ったとのこと。

そこで、本当に中高生には義務教育でついているはずの読解力があるのかについて調査したところ驚くべき結果が出ました。

文章に書いてあることをそのまま答えにするだけの問題の正答率が、公立の中学生では57%しかなかったのです。

中学校は義務教育なので、
中学校を対象とした調査は基本的にその年代のほぼ100%の人を含む=世間一般を示す
と考えてもよいでしょう。

つまりこの調査では、
世間一般にいる人の4割は、平易に書いてあることを正しく読み取ることができないかもしれない
ということが示されたわけです。

ちなみに公立進学校の高校生では82%が正答するそうなので、進学校に進める学力のある学生は読解力が高め、ということになります。


医療者の前に現れる患者さんの皆が進学校に進んでいる人ばかりではありません。

むしろ世間一般の割合からすると進学校に進む人の数の方が少ないでしょう。

とすれば、
義務教育を受けていれば当たり前に読めるくらい易しく書いたテキストやパンフレットを使い、なるべくわかりやすく説明したとしても、患者さんの4割は正しく理解できないかもしれません。

特に現在の高齢者世代は義務教育しか受けないのが当たり前の時代に生きてきた人も多く、高齢者において読解力が低い人の割合は、もしかするとこの調査よりも多い可能性すらあります。

さて、あなたの目の前にいる患者さんは、本当にあなたの話を理解できているでしょうか?

あなたが渡したパンフレットや疾病管理のための冊子の内容を、こちらが期待したように理解してくれているのでしょうか?

もし、目の前の患者さんに十分な読解力がない、と疑われるならば、全く違う方法で説明をしなければならないかもしれません。

あるいは小学生でも理解できるレベルにまで内容を引き下げて、専門用語は用いず、例え話を使って話をしなければならないかもしれません。

  • 冊子を渡して書いてあることを一緒に読むだけ、というルーチンワーク
  • 専門用語を多用して相手の理解を得られているかも考えない説明

このようなことをしている限り、あなたが救う患者の数は決して増えないかもしれませんよ。


今回参考にした記事のリンクはこちら。
AI研究者が問う ロボットは文章を読めない では子どもたちは「読めて」いるのか?(湯浅誠) - 個人 - Yahoo!ニュース

ではでは。