心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションについて考えたり思ったりしていることをつらつらと書いています。

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電子カルテがブロックチェーン化される日

こんにちは、心リハ太郎です。

仮想通貨が色々と話題になっていますが、今回はその仮想通貨の基礎技術であるブロックチェーンが、今後の医療界もしくは患者さんの人生の健康情報の管理にとってものすごく重要になるだろう、というお話です。

仮想通貨については話しませんので悪しからず(笑)

ブロックチェーンとは

仮想通貨の基礎技術となっているブロックチェーンは、情報の書かれたブロックをネットワークに参加するすべてのコンピュータで共有し、分散管理する、いわば暗号化された記録台帳のことです。

ブロックチェーンについては、こちらのサイトにわかりやすくまとまっています。
ブロックチェーンの仕組み 〜初心者のためのわかりやすい解説〜

ブロックチェーンでは、すべての情報履歴が分散して情報共有されるため、データ元による情報改ざんや、クラッキングによる情報の書き換えが困難であり、データの信頼性が保たれるという意味で、仮想通貨だけでなく、不動産などの登記簿や役所の記録など、データの信頼性が重要視される多くの記録に使えそうだと考えられています。

医療・健康分野でのブロックチェーン活用

すると、まず医療分野では様々な病院の電子カルテをブロックチェーンによって統合することが考えられます。

ブロックチェーン技術が医療履歴(健康履歴)として使われると、その患者さんのすべての医療や健康情報が履歴を含めて台帳に残ることになります。

ブロックチェーンは正確な情報伝達に役立つ

現在は、電子カルテや紙カルテ、健診結果や人間ドックの結果が、それぞれの医療機関などにバラバラに存在している状態です。

この間を繋いでいるのは患者さん本人であり、患者さんが新たに受診した医療機関へ伝える情報を取捨選択することもできてしまうわけです。

別に患者さんに悪い意図がなくても、患者さんには医学的な知識がないため、本来伝えるべき重要な情報を伝えられない、ということも大変よく起こり得ることです。

その結果、本当は医療者が知りたい既往歴やその治療歴、他の医師の診断結果、薬剤情報などが正しく伝わらないこともあり得ます。

お薬手帳や病院間の紹介状などは、そのギャップを埋めるものですが、基本的には紙での情報伝達が多く、どうしても正確性には限界があります。


しかし、ブロックチェーンを使えば、
医療・健康情報の履歴、たとえば

  • 医療機関の受診歴や既往歴、治療歴、投薬歴
  • 日々の血圧測定結果、体重
  • 健康診断結果
  • 人間ドック結果
  • 学校での体力測定の結果

などを必要に応じて利用することができるようになります。

すると、その人がどうやって現在の状態に至ったのかがわかるようになるため、現在に比べて正確な医療診断が可能になりますし、無駄な検査や診察を減らすことができます。

これは医療者にとっても患者さんにとっても非常に喜ばしいことです。

つまり、「カルテ」という病院個々の記録台帳ではなく
全く新しい健康・医療の履歴台帳が誕生し、健康管理や病気の治療の記録の基礎部分がが大きく入れ替わる
と考えてもよいかもしれません。


様々な行政システムを電子化・IT化していることで有名な北欧のエストニアは、既に医療・健康情報をブロックチェーン化しています。

ブロックチェーンは医療にどう活用できるのか(page 4):日経デジタルヘルス


本質的には、ブロックチェーンでは、健康・医療に関する履歴情報は患者さん自身のものですから、情報を開示するかどうかは患者さん本人が選択することもできるようになります。

現在、カルテに書かれた医療情報は病院のものですが、これからは患者さんのものになっていく、ということです。

ブロックチェーンは医療のコストを大幅に下げ得る

このように、ブロックチェーンによる情報伝達で検査や診察・診断の回数を減らすことで、医療コストを大幅に下げることにも役立ちます。

医療コストというと、患者さんの医療費のように感じますが、それだけではなく、医療機関の人件費機器などの購入・メンテナンス費用も減らし得るということです。

すべての医療機関で情報が安全に共有されるわけですから、すごく極端な例を考えてみると、 医療検査だけを行う専門の施設、というものができてもおかしくありません。

高額な医療機器や高度な技術や診断を要する検査などはその施設に委託する、という未来です。(そこは病院ですらないかもしれませんね)

そうすると、小さな病院や個人医は、高額な検査機器、設備を持たなくてもよくなるため、検査技師の人件費や機器のメンテナンス・更新費用が必要なくなるケースが増えるでしょう。


現在の医療費には、このような高額な機器や人件費が無駄に乗っかっている可能性がありますから、国全体の医療費抑制にもにも繋がります。

ですので、国としてもセキュリティや情報保護の問題がクリアできれば是非乗り出したい話だと思われます。

民間の医療保険のコストも下がるかもしれない

さらに、現在は紙で伝えられている情報伝達がデータで即座に安全に送られるようになるため、煩雑な書類提出を必要とする民間の医療保険の手続きなども患者さんの同意があれば病院と保険会社間でデータを受け渡せるようになります。

2018年には東京海上日動火災保険とPlanet Wayがブロックチェーンを用いた医療情報連携の実証実験を完了させています。

ブロックチェーン技術活用の医療情報連携、実証事業完了 保険金支払いサイト1カ月短縮が可能に | Med IT Tech

これにより保険支払が1ヶ月ほど短縮される見込みのようです。


ここには改ざんの危険性も存在せず、正確な医療履歴が記載されているため、恐らく保険会社にとっても喜ばしい変化でしょう。

手続きの簡略化によって人的コストが減るため、将来的には医療保険の掛け金が安くなるかもしれません。

ブロックチェーンにより医療の透明性が増し、全体のレベルが底上げされる

さらに医療者にとっては厳しい話ですが、自分の医療診断や医療行為が、次にかかる医療機関に見えてしまうようになるため、公的に医療技術や医療スキル、診断能力が評価されるようになるでしょう。

個人は特定されないとしても、少なくとも病院の治療レベルは開示される、と考えて差し支えないものと思われます。

つまりブロックチェーンにより医療の透明性が確保されるようになるため、個々人がより注意深く医療行為を行うようになりますから、医療者全体のスキルの底上げが行われ、また医療ミスや誤診などの可能性が少なくなることもありえます。

さらにブロックチェーンでは情報が分散して共有されますから、カルテの書き換えなど情報の改ざんも困難になり、医療の信頼性を高めうるわけです。

たまにニュースになるような、医療情報の改ざんなどはほとんど行われなくなる(というか不可能になる)と思われます。

ブロックチェーンはAIとの親和性が高い

このブログでも何度か取り上げていますが、AIによるディープラーニングは、おそらく医学的診断を根本から変えるものと思われます。

医療界にディープラーニングの波が到来 - 心臓リハビリテーションのまにまに
電子カルテからAIが予後を予測する時代がやってくる - 心臓リハビリテーションのまにまに

囲碁や将棋の世界では、人類最高峰の知性が既にAIに圧倒的敗北を喫しており、医師という非常に知的能力の高い集団も、いつかAIの波に飲まれることになるでしょう。

ついにGoogleも医療の世界へ乗り出したというニュースも出てきています。

グーグルが狙う次の覇権は「医療」、AIで画像診断に革命 | Close-Up Enterprise | ダイヤモンド・オンライン
ディープラーニングによる医療の変化はもうすぐ - 心臓リハビリテーションのまにまに

ディープラーニングでは、学習にあたり大量のサンプルデータが必要になりますが、ブロックチェーンで健康情報や医療情報を統一することにより、凄まじい数のデータが集まり始めるため、データの数については問題なくなるはずです。

それよりも、あまりの多様なデータが大量に集まるため、恐らく人間では処理しきれなくなるでしょう。

そこで、この多様かつ多量のデータ処理と解析(診断)をAIに任せるというのが当たり前の世界になるものと思われます。

ただし、ディープラーニングにより導き出された診断は、思考プロセスが明示されないため何故そうなったかは分からない、いわゆるブラックボックス化されていることが多いので、これを読み解ける技能を持った人が診断の世界に残る、ということになるかもしれませんね。

終わりに

ブロックチェーンについて、医療との関わりや医療にもたらしうるインパクトを考えてみました。

ブロックチェーンについては、『ブロックチェーン・レボリューション』(ドン・タプスコット,アレックス・タプスコット著)が詳しいです。

ブロックチェーンとは何か、ブロックチェーンを使えばどのようなことが可能になるのか、そして将来どのような世界になるのかを考えたい方には必読の1冊です。

少々分厚く読み応えはありますが、読んで損する本ではありませんので、興味のある方は早めに読んでおくことをお勧め致します。

もう少し易しいほうがいいなーって方にはこちらがオススメ。


ブロックチェーンが作る新しい世界に想いを馳せてみましょう。

ではでは。