心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションについて考えたり思ったりしていることをつらつらと書いています。

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心不全に冷房があまり良くない理由

こんにちは、心リハ太郎です。

夏が近づき、職場にも冷房が入るようになってきました。

心臓リハビリテーションの運動療法室では、体温の上がりやすい有酸素運動を行う人が多く、冷房が強めに設定されることが多いのではないでしょうか?

その中で、入院中の心不全患者さんから、リハビリ室が寒いという声をよく聞きます。

心不全の方は、なかなか長時間の有酸素運動を行えないため運動でも体温が上がりにくく、また病衣が薄めで、裸足だったりすることも重なると、かなり寒く感じる方が多いようです。

しかし、この寒さには心不全特有の事情があり、またそれが心不全を悪化させたり、心不全が改善しにくくなる要因になりえるのです。

心不全では血管が収縮している

心不全とは、心臓の機能が低下することで心臓以外への影響が出ている状態のことです。

心臓は、血液を全身に送るポンプで、特に重要なのは、脳や心臓など生命維持に欠かせない臓器への血流です。

心不全になると、血液を送る力が弱くなるので、脳への血流が落ちやすくなります。

すると、全身の血管をギュッとしめて、頭に血が上りやすくなるように調整をします。

こうすることで犠牲にするのは手足などの末梢や消化器などの内臓の血流です。

手足や消化器で血管が収縮すると、そこには血液があまり流れなくなっています。

血流が悪いということは、血液によって体内深部の体温が伝わらなくなりますので、特に手足などはかなり冷たい状態になります。

また消化器の血流が悪くなると胃腸の調子が落ちたり、栄養を取り込みにくくなったりします。

冷房が効きすぎているとさらに血管が締まる

このようにただでさえ血管が収縮している手足が、冷房によってさらに冷やされると、どうなるでしょうか?

人間の身体は寒冷刺激に対して、体内の体温が奪われないよう、血管をしめて末梢の血流を減らす反応が働きます。

この時に働くのは、自律神経系の中でも身体を緊張した状態に持っていく交感神経です。

交感神経は、心拍数を増やし、心臓の拍出量を増やして心臓の仕事を増やし、血管を締めることで、血圧を上げてさらに心臓の負担を増やします


交感神経が血管を収縮させる・・・?


先ほど、心不全では血管が収縮している、という話をしました。つまり、心不全ではもともと交感神経がかなり働いていて、心臓に負担をかけた状態になっているのです。

そこに過度な冷房で身体が冷えると、さらに心臓に負担をかけることになりますし、手足や消化器への血流が減ることになります。

血流が悪く酸素や糖の届かない手足は痩せ、低栄養の状態になる土台が整っていくかもしれません。

心不全ではちょっとしたことでバランスが崩れる

普通の人ならちょっと寒いなー、だけで済む刺激でも、心不全が重症な場合はそれだけで心臓の負担を増やし、心不全を増悪させたり、治療の効果が出にくくなったりする可能性があります。

また心臓悪液質とよばれる低栄養状態を助長させる可能性すらあります。


そもそも、心不全という病気は、心臓が悪いのをカバーするために働く神経体液性因子が、心臓を追い込むことで悪循環に陥っていく、というの是正するのが病気の治療の主軸です。

この記事で詳しく説明しています。

それなのに、過度な冷房によってさらに交感神経を緊張させてしまっては、病気を治療しているとはいえないかもしれないのです。

和温療法を含む温熱療法が心不全に効果がでる、というのはこれと真逆のことをして、心臓の負荷になる因子を改善させているためでしょう。

入院心不全患者さんがいるときは冷房は薄めに

冷房が何度くらいがよいか、というのはハッキリしたことはわかりません。

ただ、CPX(心肺運動負荷試験)では運動時の発熱による疲労感を少なくするために室温を25度くらいまで冷やすことが推奨されていることを考えると、25度では冷えすぎかと思われます。

おそらく27〜28度あたりが適温なのではないでしょうか?

また患者さんも病衣1枚だけでは寒すぎるので下着を着てもらうとか、羽織るものを持ってきてもらう、くつ下は履いてもらうなどすると、よりよいかもしれません。

あとは、寒くないか、手足が冷えていないかなどを手足を触らせてもらって確認するのもよいかもしれません。

特に、心臓悪液質(カヘキシー)とよばれる、心不全の影響で著しく痩せた患者さんは、骨格筋量や脂肪量もないため体温を保ちにくく、心臓が悪いため末梢へ血液で体温を運びにくく、体温の元になる食事も食欲不振で摂れていないことがほとんどです。

痩せた心不全患者さんでは、特に注意するのがよいものと思われます。

まとめ

入院心不全患者さんに冷房がよくないかどうかはエビデンスのある話ではありませんし(というかなかなかエビデンスを出しにくいところですよね)、全ての人に当てはまるわけでもありません。

しかし温熱療法の逆をしていると考えれば、冷房が悪影響になっているかもしれない人(とくにカヘキシーなどの低栄養状態の方)が身体を冷やすことで心不全が改善しにくくなっていると考えても間違いではないのかもしれません。

また、低体温症は命を奪うわけですから、体温は生命維持にとっては大変重要ですし、体内の酵素活性も低体温では落ちてしまいます

そもそも寒さに患者さんをさらしていること自体が、患者さんのQOL的には既に誤りともいえます。

皆さんも、リハビリ室の温度設定には注意を払ってみてくださいね。

ではでは。