心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションについて考えたり思ったりしていることをつらつらと書いています。

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時計描画テスト(CDT)を使ってみよう


こんにちは、心リハ太郎です。

みなさんは認知機能の検査にどのようなものを使っていますか?

MMSE?
長谷川式?
MoCA?

これらは認知機能のスタンダードな検査ですが、どれも最低10分程度の時間が必要なので、忙しい中では行う時間をなかなか確保できないときもありますよね。

時計描画テスト(CDT: Clock Drawing Test)は短時間で認知機能をスクリーニングできる検査で、使い方によっては非常に有用です。

どんな検査なのか、またどう使うと有効かをみていきましょう。

心臓リハビリでは認知機能評価が重要

心疾患のリハビリテーションでは、認知機能の評価、特に軽度認知障害(MCI)の判別が重要です。
MCIについてはこちらで解説しています。

認知症やMCIの患者さんでは、病気について説明し、管理方法を伝えても、5分後には忘れてしまっていたりします。

また物事を順序立てて計画的に実行していくような、いわゆる遂行能力の低下により、実際の管理行動には結び付かず、再発入院を防ぐような管理ができないケースも多々あります。

そのため、認知機能が低下した患者さんでは、本人以外の協力が必要な場合が多くあり、対応できるかどうかで再入院率が大きく変わる可能性すらあります。

MCIを含めた認知機能低下者の割合は65歳以上では4人に1人と高率であることが厚労省のデータでも示されています。

また高齢心不全患者さんの70%がMCIであるという海外の報告もあります。

このようにMCIとは心臓リハビリに関わる者、また高齢者に関わる者にとっては決して他人事ではありません。

MCIを見分ける方法は客観性が大事

MCIでは生活機能には大きな障害が生じていないため、会って少し話したりするくらいでは見分けがつかないことも多いです。

このように主観的な判断は意外とあてにならないので、客観的な検査が必要になります。

しかし、冒頭で挙げたようなMMSEなどのスタンダードな認知機能検査にはおおむね10分ほどの時間がかかるため、病棟の看護師さんなどが多忙の業務中に行うのは、負担感が強いかもしれません。

そこで大事なのが短時間でできるスクリーニングツールなのです。

時計描画は短時間でできる認知機能のスクリーニングテスト

時計描画テスト(CDT)はB5の紙と筆記用具を用意し、

  1. 10cmくらいの円を描いてもらう
  2. 時計の数字を描き込んでもらう(ノーヒント)
  3. 10時10分になるように時計の針を描き込んでもらう(11時10分の場合もあります)

という、用意にも実施にもほとんど手間がかからない簡単な検査です。

次のようなFreedman法による評価方法が知られています。
全体像

  • 整った外周円が描ける。
  • 外周円の大きさが用紙に対して適切である。

数字

  • 1~12のみ書く。
  • 算用数字を用いる。
  • 数字の順序が正しい。
  • 用紙を回転させないで書く。
  • 数字の位置が正しい。
  • 外周円の中に位置する。

  • 2本の針を有する。
  • 適切に時を指す。
  • 適切に分を指す。
  • 分針の方が長い。
  • 余計な印がない。
  • 2本の針が結合する。

中心

  • 中心が設定されている。

この15項目を満たすものが正確な時計描画と考えられます。

計画性がある人は12時、3時、6時、9時の位置を考えて描きますし、認知機能が怪しい人は順番に書いてどんどん位置がズレていったり、最後に12が2つ並んだりします。

また時計の針の中心が円の中心になかったり、長針短針の区別がつかなかったり、数字が円の外に出ていたりする場合も認知機能が怪しいと言えます。

紙を回転させて描いたりする人にも出会いますが、やはり認知機能は怪しいと考えてよいでしょう。

CDTに遅延再生を組み合わせたMini-Cogもスクリーニングとしては優れた検査

MMSEでは、桜・猫・電車の3語を覚えてもらい、計算課題の後に3語を思い出させるという遅延再生の検査があります。

この遅延再生は短期記憶の保持ができるかどうかを見るためのよい検査方法です。

この遅延再生をCDTと組み合わせたのがMini-Cogという検査方法です。

  1. 桜・猫・電車の3語を覚えてもらう(覚えるまで6回ほど繰り返す)
  2. 時計描画テストを行う
  3. 先ほどの3語を思い出してもらう(順番は問わない)

CDTを2点、桜・猫・電車をそれぞれ1点の、計5点満点とし、2点以下なら認知症疑いとなります。
このMini-CogはMMSEとの感度や特異度が大体70-80%くらいとされています。

また時計描画が不成功の場合は認知症の疑いは高くなり、遅延再生ができない場合も短期記憶は何らかの形で低下していますので、疾病管理指導が効果が出にくい可能性があると疑っておくとよいでしょう。

スクリーニングでひっかかったらMoCAを

上で紹介したような方法でひっかかった場合は、MMSEやMoCAなどの検査に進みましょう。

特に心疾患領域で発見したいのは認知症ではなく病気の自己管理ができなくなる軽度認知障害です。

ですので軽度認知障害(MCI)を発見するためのMoCAが有用になります。

日本語版であるMoCA-Jの質問用紙はこちらでダウンロードできます。
http://www.mocatest.org/wp-content/uploads/2015/tests-instructions/MoCA-Test-Japanese_2010.pdf

マニュアルはこちら。
http://www.mocatest.org/wp-content/uploads/2015/tests-instructions/MoCA-Instructions-Japanese_2010.pdf

実際に海外の心不全領域ではMoCAがスタンダードなMCIの検査になりつつあります。

MoCAが25点以下でMCIと考えられています(感度80-100%、特異度50-87%)。

おそらく日本国内でも心疾患では今後はMoCAを使って判断するケースが増えるのではないでしょうか。

このあたりはまた別項で述べようと思います。

高次脳機能障害については患者さんとその家族の目線から書かれたこの本がすごく面白いです。
Kindle版もあってiPhoneとかでもサクッとよめるのでオススメです。ちなみにkindle unlimtedに入ってる方は無料です。

軽度認知障害は改善可能とも言われていますので、スクリーニングで軽度認知障害と判定された方には、認知機能の改善に効果があるというこういった教材を使ってみるのもよいかもしれませんね。
この教材は子ども向けの焼き直しではなく、内高齢者向けのなかなか面白い実践的な内容になっています。

ではでは。