心臓リハビリテーションのまにまに

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左室収縮能(EF)のわかりやすい(かもしれない)解説

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こんにちは、心リハ太郎です。

以前はEFがよければ心臓は問題ないねみたいな考えの人が多かったですが、HFpEF(ヘフペフ)という心不全の概念の出現でそれが少しずつ変わりつつあります。

EFは心筋の動きの元気さ(収縮能)を見る指標であって、心機能をこれ一つで表せる指標ではありませんが、それでも心機能=EFと考えている人が心エコーや心臓リハビリの初学者には多いように思います。

今回はEFとは何か、どう考えたらよいのかについてのお話です。

 

心エコーについて詳しく勉強したい方はこちらへどうぞ。 

心エコーに詳しくなるオススメ書籍12選 - 心臓リハビリテーションのまにまに

心臓のポンプ機能(心機能)の4因子

心臓の最も大事な働きは、血液を全身に配給するポンプの役割です。

心臓にある4つの部屋のうち、全身に血液を送るのが左心室ですので、心臓のポンプ機能(心機能)を考える際には主に左心室が注目されます。

この心機能は以下の4つの因子により規定されています。

  • 収縮能
  • 拡張能
  • 前負荷
  • 後負荷

この4因子のうちの収縮能を代表する指標がLVEF(Left Ventricular Ejection Fraction: 左室駆出分画または左室駆出率)、俗にいうEFです。

 

拡張能はこちらで説明しています。

左室収縮能(EF)とは

EFの単位が%(パーセント)、つまり割合であることをご存知でしょうか?

実はEFが単なる割合であることを理解することが、EFを正確に理解する必須条件になります。

 

EFは左心室の動きから次のように計算します。

EF =(LVDd ー LVDs)/LVDd

LVDd: 左室拡張末期径

LVDs: 左室収縮末期径

左室拡張末期径とか左室収縮末期径とかいう漢字が羅列した言葉が出てくると、読むのが急に嫌になりますが、簡単に言うと、心臓の左心室が一番拡がった時の大きさ(LVDd:左室拡張末期径)と、左心室が一番縮んだ時の大きさ(LVDs:左室収縮末期径)です。

 

心臓が一番拡がった時とは、最も血液を溜めている時の大きさです。逆に心臓が一番収縮した時とは、血液を押し出しきった時の大きさです。

 

この差が左心室の筋肉がどのくらい大きさを変えられるか、つまり左心室の筋肉の動きの良さということになります。

 

人により、心臓の大きさはまちまちなので、補正のために最大時の大きさ(拡張末期径)で割るとEFになるわけですね。

ちなみに心臓エコー検査ではEFの決定方法は2種類あり、上で説明した式は古いタイプのもの(Teichholz法: ティーショルズほう)です。

心筋梗塞などではより正確なEFを算出するために拡張末期面積と収縮末期面積から容積を求めるSimpson法(シンプソンほう)が用いられます。このあたり詳しく知りたい方は書籍などをご参照ください。 

このように、EFとはその人の心臓(左心室)の大きさに対して何%くらいの血液を大動脈に絞り出す能力(収縮能)があるかをみています。

EFによる収縮能の判断法と低下の原因

EFの正常値は60%以上とするのが一般的で、収縮能については50%以下が軽度低下、40%以下が中等度低下、30%以下が重度低下と考えられます。(何種類かの基準があるので、必ずしもこの通りではないですが、大体こんな感じです。)

 

EFが落ちる=心臓の筋肉が弱る主な病気には、心筋が壊死して動かなくなる心筋梗塞と、心筋が何らかの理由で変性し、その後心臓が変形して動きが衰える心筋症などがあります。


このような病気があるとEFは低下し、心臓のポンプ機能低下により心不全が生じることで、患者さんのADLやQOLが著しく低下するため、EFの低下する心筋梗塞や拡張型心筋症などの病気が心臓リハビリテーションの対象となっていたのです。

EFだけでは心機能が判断できない

ですが、ここで問題が生じます。

EFが50%以上、場合によっては60〜70%以上あり、ポンプ機能がよいと考えられていたはずの患者さんに心不全が発生する例が多発してきたのです。

 

しかもそのようなEFのよい心不全患者さんも、EFの悪い心不全患者さんと同様に寿命が短いことが世界中で次々と報告されたのです。 

 

これが冒頭に述べた、HFpEF(Heart Failure preserved EF: EFの保持された心不全)です。 HFpEFにはいくつかの原因がありますが、その理由の一つが、小さい左心室のEF60%と大きな左心室のEF60%では、数値は同じでも出している血液量が違う、ということです。

 

一度の左心室の収縮で送ることができる血液量のことを一回拍出量(SV: Stroke Volume)といいます。

ここを押さえておくと、EFがいいのに心不全になる(HFpEF)という心不全のパターンが理解しやすくなるので、頭の片隅に置いといてください。

 

コントロール不良な高血圧や、心臓弁膜症などがある場合、心臓は血液を送るのに必要以上に心筋を収縮させなければならず、左心室が肥大して部屋の大きさが小さくなることがあります。


このような心臓では収縮能には異常がないためEFだけを見れば60%以上あるのですが、部屋が狭く多くの血液を溜めることができないため、送る血液の量(一回拍出量: SV)が減り、結局心臓に負担がかかることで心不全になるわけです。

EFを見た時考えることは

さて、そろそろ話をまとめていきましょう。  

 

EFの値が悪い場合、これは間違いなく心機能が悪いです。

なぜならEFが悪いということは左心室の筋肉の動きが悪くポンプ機能が低下している、つまり一回拍出量が少なからず低下しているということだからです。

 

1分間あたりの心拍出量は一回拍出量 × 心拍数ですので、EFが悪い場合は確実に心拍出量が落ちます。

 

 

 次にEFが良いのに心不全になった人の場合は、一回拍出量が落ちているような所見がないかを考えます。左室肥大(心室中隔や後壁の12mm以上の肥厚)がないか、左室の狭小化(LVDdがかなり小さな値になっている)がないか、などです。 

 

最近は心臓エコー検査でもかなり正確に一回拍出量(SV)を計測してくれる機能がついたものがあります。

SVの正常値60〜80mlを大きく下回る場合は一回拍出量(実際に出している血液量)が落ちているわけですから、EFが良くてもポンプ機能は悪いかもしれません。

エコー検査に心拍数が記載されていて、あとは身長と体重がわかれば下の式で心係数(CI: Cardiac Index)を算出することができます。

CI = (SV × HR) ÷ (身長^0.725 × 体重^0.425 × 0.007184)

心係数がForrester分類における末梢循環不全の指標である2.2を下回る場合、かなりの心拍出量低下があると考えて差し支えありません。

 

ちなみに僧帽弁や大動脈弁の弁膜症があり、逆流している場合、上のSVには逆流分は反映されていません。

したがって、弁の逆流がある場合は、SVの数値よりも有効血液量はさらに少なくなることは覚えておいてください。

 

またE/e'が13〜15を超えてくる場合は、EFが60%と良い数値でも拡張能が悪く心機能が落ちる場合があります。ちなみにE/e'が13を超えている場合、ヨーロッパ心臓病学会のガイドラインでは心不全を疑う所見に当たります。

 

E/e' の数値はSVにも反映されますので、SVが少ないのにEFがいい時はE/e' に代表される拡張能障害がある可能性が高くなります。

最後に

このように心機能はEFだけで決まるものではないことを理解すると、逆にEFの重要性と臨床的な意味合いが理解できるようになります。

 

EFが40%を切るくらい収縮能が悪い人は、疑いなく心機能は低下しています。またEFが60%以上あるからといって心機能が低下していないと断言できるわけではありません。

 

是非臨床においてもEFについてより深く考えることで、心機能に対する理解を深めていきましょう。

 

より深く心機能を理解したい方向けに、心機能を決める4つの因子についてこちらで説明しています。ぜひこちらも読んでみて下さい。

 

心臓エコーについてをより深く知るための本については、こちらで紹介しています。もっと勉強したい人は参考にしてみてください。

リンク先に行くのが面倒な人はこのあたりを読んでいただくのがおすすめです。 

■心臓外科医が描いた正しい心臓解剖図

心臓エコーの本ではありませんが、基本的な心臓の解剖を美しい絵で非常にわかりやすく説明してくれている良書です。心臓の構造を理解することで心臓エコーだけでなくレントゲンやCT、MRIでの心臓の画像が理解できるようになるはずです。心臓に関わる職種の方はぜひ手元に持っておくとよい一冊。

■恋する心エコー ―心機能は4つの線で理解できる―

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■萌える! 心力学 心機能がやさしくわかる58のエピソード

こちらはエコーというよりは心機能とはなにか、ということを理解しやすく説明してくれている一冊です。心臓とはいったいどういう機能をもった臓器なのかを理解するのに最適。

ではでは。