心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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心拍数が上がっているときは

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なんかいつもより患者さんの心拍数が高いなーって時がありますよね。

これをどう思いますか?

心拍数は自律神経のバランスを反映する

心拍数は交感神経によって速くなり、副交感神経によって遅くなるよう調節されています。

交感神経はエサ取り神経と言われていて、動物が獲物を捕まえるために身体を動かすときに優位に働きます。

つまり交感神経の働きが強い時は身体はどちらかといえば興奮状態にあるということで、心拍数が上がり、末梢血管が締まり、もし獲物を捕まえるために怪我をしたら血がすぐ止まるよう血液が固まりやすくなります。

副交感神経は交感神経を抑えるような働き方をします。交感神経にブレーキをかけているイメージですね。

基本的には安静時は副交感神経が優位に働いており、運動を開始すると副交感神経のブレーキが徐々にゆるんできます。副交感神経のブレーキがゆるむと心拍数は増加します。

つまり患者さんの心拍数が高いとき、手が冷たいときというのは副交感神経によるブレーキがゆるみ、交感神経が優勢に働いているということです。

心拍数が高い時に何を考えるか

心拍数が高いということは、身体をわざわざ興奮状態にしておかなければならない何かの要因が潜んでいる場合があります。

例えば

  1. 脱水傾向
  2. 発熱や炎症
  3. 心拍出量(主に一回拍出量)の低下
  4. 貧血
  5. 精神的ストレス
  6. 睡眠不足

などです。

これらはどれも治療の邪魔になって病気の回復を遅らせたり、離床や運動療法に悪影響を及ぼしたりするものばかりです。

脱水のときは循環血液量が減るために心拍数を速くすることで全身への血液配給量を保たせようとします。

発熱や炎症は基本的には体にとって緊急事態なので交感神経が高くなります。

心拍出量が低下する原因は、心筋梗塞の既往や心臓弁膜症、心筋症などの心臓の機能異常が生じる病気がある場合です。このような病気も軽度であれば、それほど心拍出量が低下しませんが、重度になってくると心拍出量が低下し、心拍数を上げなければ血液を送る量が保てなくなります。

貧血の時は運ばれる酸素量が少なくなるのでやはり心拍数を速くすることで全身への酸素配給量を保たせようとします。

精神的ストレスは現代の人間には多い状態かもしれません。心配事や悩み事、人間関係の問題などがあると緊張状態になるため身体は興奮し、交感神経が亢進します。その結果、心拍数の上昇が起こることがあります。入院中であれば、病気のことが心配で精神的に落ち着かないということもあります。

睡眠不足は精神的ストレスや睡眠時無呼吸症候群などで生じます。心不全の患者さんでは、利尿薬投与による夜間頻尿で睡眠不足となる場合もあります。

また、上記のいくつかの因子が複合している場合もあります。発熱で発汗が進み水もあまり飲めずに脱水が進むとか、ガンの出血があって炎症もあり貧血も進むなどです。

このように心拍数を上げなければいけない状態が続いた結果、心不全のような心臓の機能が落ちている人は心臓を休めたいのに休まらない状態が続くことになり、心不全が増悪することにも繋がります。

心拍数が上がっているときは、なぜだろう?って考えてみてください。その原因の改善が患者さんの治療効果を上げ、色々なことがうまく回り始めるきっかけになるかもしれませんよ。

自律神経に関する書籍

自律神経については『やさしい自律神経生理学』が幅広い内容を網羅しており、またビジュアルも豊富でおすすめです。

自律神経の調節機能や自律神経が各種臓器にどのように影響しているか、人間の生存や生活と自律神経がどのようにかかわっているかなど、内容も様々でなかなか面白く読める本です。

また心拍変動について、かなり詳しく書かれた本がこちらです。マニアックなほど細かな情報が満載です。古い本ですが、心拍について詳しく知りたいという場合は間違いない本だと思います。

 ではでは。