心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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心臓リハビリテーションとは(その2)

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前回の話はリハビリテーションとは何ぞやという内容でした。

では「心臓」リハビリテーションとはどういうものなんでしょうか?

心臓リハビリテーションとは

心臓リハビリテーションとは

  • 心臓病になったことで失われた何かを取り戻す過程
  • もしくはそれを取り戻すことができない場合は代わりの何かで補う過程

こういった過程そのものが心臓リハビリテーションだと私は考えています。

心臓病で失われるものとは

では、心臓病になった患者さんが失うものには例えばどのようなものがあるでしょうか?

  1. 心臓が血液を送る力
  2. 身体の調節能力
  3. 問題なく日常を過ごせる体力
  4. 精神的な安心感や自信
  5. 安定した社会生活
  6. 金銭

心臓とは体の隅々まで血液を送り届けるための器官ですので、心臓病になって心臓の機能(心機能)が悪くなった場合(1)、脳や腎臓の働きが悪くなったり(2)、体力が低下したり(3)、その程度がひどい場合は心不全という状態になったりします(心不全については別の機会に詳しく書きます)。

また心臓病になったことで気分が落ち込んだり、心臓のことが心配で何も手につかなくなるなど、精神的な問題が起こることもあります(4)。

さらに動くことが心配になって外に出かけなくなる、今まで参加していた活動に行かなくなる、それまで付き合いのあった人たちと疎遠になる、仕事をやめないといけなくなる、家族との関係が悪くなるなど、社会的な問題が起こることもあります(5)。

仕事をやめることや、病気の治療費などで金銭的余裕がなくなるという方もいます(6)。

心臓病の治療だけで全てが解決するわけではない

心臓病自体への対応は医学的な治療が主になりますが、精神的な問題や社会的な問題は、心臓病に対する医学的な治療を行うだけでは改善しないことがほとんどです。

「治療がうまくいって心臓病は軽症で済んだので心配しなくても良いですよ」と言われたとしても、全く元気になれず、どんどんと不安を募らせて閉じこもっていく患者さんの場合は、カウンセリングや家族など周囲の環境へ働きかけるといった対応が有効な場合もあります。

また金銭的な問題が生じた場合は、何らかの社会的サポートを受けられるような援助をすることも考えられます。

ですので、

  • 病気によって失われるのは身体的なものばかりではない
  • また、それを回復させる手段も身体的な治療だけではない

ということを意識することが重要です。

なので前回の、使えるものは何でも使う、という話が出てくるわけです。

このように患者さんの抱える問題に対して、色々な解決策を見出せるところが心臓リハビリテーションの懐が深く面白いところです。

広い視点を持つことを心がけよう 

今よりもっと広いリハビリテーション的な視点で患者さんをみた時には、より多くの解決法が得られる可能性があります。

広い視点を持つことで自分の職業の枠内を超える課題が見つかった場合、他の職業の人と協働して解決に当たらざるを得なくなります。

すると結果的に最近注目されているチーム医療や多職種連携が実践・達成されることにもなります。

また医学的な治療の場面であってもリハビリテーション的な視点から患者さんを一人の人間としてみることは、その人を尊重することに繋がり、患者さんとの信頼関係を築く上でも大きな意義があります。

 

もちろん、病気の治療のためには、薬物療法、食事療法、運動療法などの医学的な治療がしっかり行われていることが前提なのは言うまでもありません (^^;

 

※ あくまで私個人の考え方なので、これが正しいというわけではありません。

 

(その3へつづく)